6次産業化とは、農林漁業従事者が、自身で食品加工から流通・販売まで一体的に取り組んだり、自身が作った農産物を使った飲食店経営に取り組んだりと、農林漁業本来の1次産業だけでなく、2次産業(工業・製造業)・3次産業(販売業・サービス業)に総合的に取り組むことをいいます。
6次産業化は農林漁業従事者の雇用確保や所得向上のメリットがあり、全国的に取り組まれており、成功事例がある一方で、生産・運営体制人員不足、魅力的な商品づくりや販促・販路確保に苦戦し、成功していない事例も見受けられます。
本稿では、私たちが道の駅の管理運営を通じて取り組んだ、農業生産団体(1次産業)、加工食品事業者(2次産業)、道の駅(3次産業)がお互いの強みを活かし、連携して、魅力と競争力のあるオリジナル加工食品を開発・製造・販売する「地域内6次産業化」についてご紹介します。
INDEX
道の駅が持つ販路と顧客のニーズを活かした新たな加工食品の企画・開発
まず、地元生産・加工団体による加工食品開発においては、自身の農産物や製造体制を前提とした「プロダクトアウト」志向の商品を開発・製造・販売する傾向にあり、必ずしも顧客ニーズに沿った商品ではないことから販売に苦戦することがあります。そのため、当社が運営している道の駅では、商品販売情報や購入者属性情報(性別・年代・購入商品)に基づく、顧客ニーズに即した売れ筋商品の強化に取り組んできました。
近年では、IoTを活用した最新の顧客情報分析ツールをいち早く導入し非購入者属性情報(道の駅来訪者の性別・年代)を把握することで、顕在化していない隠れた顧客ニーズに対応した、新たな商品の仕入れ、新たな商品・サービスの企画開発等に活用しています。
道の駅の主な購入者層は一般的にミドル・シニア層ですが、当社が運営している滋賀県甲良町の道の駅では、来訪者数が多い割には商品の購入率が低いミドル層の女性をターゲットとして、これまで道の駅に出荷されていないジャンルの加工食品を地元農家が設立した生産・加工団体に提案し、一緒に企画・開発に取り組んでいます。
美味しいだけではダメ?「売れる加工食品」の作り方
道の駅で販売されている加工食品が「土産物」として売れるためには、「美味しい」のは当たり前で、さらに他の類似商品には無い農林水産物そのものブランドや加工方法、味の「独自性」や「作り手のこだわり・ストーリー」があるかなど、美味しさ以外の「この商品ならでは」と観光客が納得できる魅力が必要です。
しかし、既存の6次産業化事業者・団体では、スタッフの知識や技量に限界があり、こうした「美味しさ」以外の魅力がある「売れる」加工食品の企画・開発に苦労されていることがあります。
加工食品の付加価値・魅力向上に向け当社が運営する道の駅での取組を紹介いたします。
1.人材・ノウハウを活かした商品開発
当社では、元飲食店オーナーが道の駅飲食部門スタッフとして、飲食メニューや総菜・弁当類、菓子類のレシピ開発、調理・製造指導を行っており、こうした人材・ノウハウを活かして、地域の事業者・団体の農産物や製造技術・人員体制を考慮した魅力的な商品開発の支援が可能となっています。
2.お客様の意見を反映した商品開発
また、道の駅で加工食品試作品のテスト販売と購入者アンケート調査を実施し、購入者の皆さんからの感想・ご意見をもとにレシピを改良する取組みも行っています。
購入に繋げる効果的なプロモーション、ブランディング
どんなに美味しく、作り手のこだわりが詰まった加工食品であっても、消費者の皆さんにその商品の存在・魅力を知ってもらい、実際に店頭で手に取って、購入していただけないと売り上げになりません。
近年の6次産業化の加工食品には、外部デザイナーによるオシャレなパッケージデザインが増えてきています。しかし、店頭での販促活動や販促グッズの作成、マスコミやSNSを活用した情報発信等、実際に店頭で興味を持って手に取ってもらうための取組にまで手が回っていない事例が多いのではないでしょうか。
当社が行う、道の駅における各種プロモーションの取組を紹介いたします。
道の駅運営ノウハウを活かした全体のトータルプロモーション
当社が運営している道の駅では、道の駅の集客や商品・サービスのブランディング・プロモーションを担当するスタッフが、加工食品のプロモーションを行っています。各商品の想定顧客ターゲットに適した情報発信(マスコミ向けのプレスリリース、SNSを活用した情報発信)の検討・実施、店頭で商品を手に取っていただくためのポスター・POPの企画・実施等、これまでの道の駅の運営を通じて取得したノウハウを活かして総合的・実践的なプロモーションが可能となっています。
「地域内6次産業化」を広げ、地域活性化を目指す
本稿では、主に当社が指定管理者として道の駅の管理運営に関わっている滋賀県甲良町における地域内6次産業化の取り組みを事例にご紹介してきました。
特産品がない地方自治体、農業従事者の減少が著しく進行している地方自治体では、農業従事者が、生産(1次)→製造や加工(2次)→農家レストランや販売など(3次)までの全ての経営に関与する6次産業化は、実現が難しい状況にあると思います。
道の駅が、道の駅の「販路(売場)」と「顧客のニーズ」を活かして、地域の農業生産団体(1次産業)、加工食品事業者(2次産業)と一緒に「地域内6次産業化」を実現し地域活性化を図ることは、どこの自治体でも有効であると考えています。
私たちは、道の駅指定管理者として、また他の道の駅指定管理者等へのコンサルティングを通じて、道の駅単体ではなく、地域の生産者・事業者の皆さんとともに地域の未来を創る、「地域内6次産業化による地域活性化」に貢献してまいります。