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公民連携(PPP)とは?

社会課題解決に向けた公民連携のメリットや先進的な事例、成功ポイントを解説

財政の制約や自治体職員の減少などにより公共施設や公共サービスの維持が困難になるなか、国が社会的課題を解決し成長型経済を牽引する手段として、公民連携(PPP)の取り組みの推進を強く後押ししています。PPPにはどのようなメリットがあり、そしてその成功ポイントはどこにあるのか、PPPマネジメント部 部長の石川崇之と同部インフラPPP室 室長の山口剛に話を聞きました。

INDEX

そもそも公民連携(PPP)とは何か

公民連携(Public Private Partnership,以下PPP)は、従来公共団体が主導していた公共サービスの提供を、民間事業者の資金やノウハウを活用して進めていく仕組みを総称したものです。イギリスで始まり日本では1999年7月に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」という長い名前の法律が議員立法により制定されました。このPFI(Private Finance Initiative,以下PFI)は、民間資金の活用に特に焦点を当てたものです。

PFIには民間資金の活用以外にも、従来とは異なる特徴が主に3つありました。
1つめは業務の発注を単年度ごとではなく「長期化」すること、2つめは設計、建設、維持管理、運営などの各業務をバラバラに任せるのではなく「包括化」すること、3つめはやり方(仕様)を細かく決めるのではなく「性能規定化」により実現すべき性能を示し、やり方の自由度を高めることです。

<公民連携を促進するポイントは3つの特徴>
1. 事業期間の長期化
2. 業務単位の包括化
3. 業務内容の性能規定化

公民連携は、公共団体職員(特に技術職)の高齢化や減少等という公共サービスの「供給側の問題」と、社会情勢の変化による多様化する公共サービスニーズや膨大な社会インフラ(既存の道路や橋梁、上下水道等)の老朽化への対応ニーズ等の「需要側の問題」という2つの問題に対して、解決策になり得ます。なぜなら、事業期間全体で捉えた場合の公共団体職員の負荷(発注業務量や現場での作業量)の削減が期待できることに加え、民間事業者も計画的に自社の持つさまざまな事業ノウハウや異業種連携による効果を活かしてニーズに対応した公共サービスの提供を実現しやすいからです。

こうして、資金調達面以外でも民間企業の力が導入しやすい環境づくりが進められ、PFIとして始まった公民連携は民間の資金調達を要しない公共事業にも広がりはじめました。指定管理、包括的民間委託などの新たな枠組みもその流れのなかで生まれたものです。ハコモノと呼ばれるさまざまな公共施設から、道路や橋、公園、上下水道といった社会インフラまで、PFIを含む公民連携が大きく広がりました。従来の公共事業のやり方が困難となってきている中、以前は選択肢の1つであったPPPの適用はより一般的となり、論点は「どのようなPPPとするのか?」に移ってきています。

実際、1999年の導入以降のPFIの事業件数は累計で1071件と拡大を続け、2022年度のPPP/PFI事業規模実績は3.9兆円まで拡大しています。さらに国は、財政の逼迫、生産年齢人口の減少、インフラの老朽化などが顕在化するなか、社会的課題を解決し、成長型経済を牽引する手段としてPPP/PFIに注目し、さらに積極的に推進していくことを打ち出しました。2024年度に改定されたアクションプランでは2022年からの10年間で、事業規模を30兆円にまで拡大することが掲げられ、PPP/PFIは今ホットな日本の成長戦略の1つになっています。

実施方針公表件数
出典:「PFI 事業の実施状況について」(内閣府)

ますます活発化するPPP/PFIの取り組み

・代表的な分野

創意工夫をこらしたPPP/PFIが全国各地で展開されています。「ハコモノ」ともいわれる公共施設のPPP/PFIで代表的なものに学校給食センターがあります。給食施設は、1970年代前半のベビーブームを受けて急速に設置が進みましたが、老朽化が進み、児童生徒数の減少も見据えた効果的な建て替え手段としてセンター方式のPPP/PFI事業が増えました。規模の大きなところでは1日1万食以上の調理と配送を扱うところもあることから、大規模調理施設の施設整備や運営の経験が豊富な民間企業との連携が大きな力になっています。

また、公営住宅(余剰地活用を含む)や廃棄物処理施設、スタジアム・アリーナ等に関する取り組みも増えています。これらの分野も事業推進に必要なノウハウを民間事業者が蓄積しており、公民連携の効果が期待されています。最近では超高齢化が進み多死社会を迎え、火葬需要が増加しており、PPP/PFIによる火葬場整備等の推進も内閣府が示すPPP/PFI推進アクションプランで示されています。

・その他の社会インフラ分野

ハコモノ以外の道路や橋梁、上下水道、公園などの社会インフラの維持管理・運営についても、PPP/PFIが推進されています。中には無電柱化PFI事業もあります。電柱の倒壊は停電や道路交通の遮断を招くことから、景観整備だけでなく防災の観点からも重要性が高まっています。しかし、すでに地下に埋設されている上下水道管やガス管などの占用物の管理者との調整、既設埋設物の撤去と新たな共同溝の設置、それぞれの事業者による各家庭への引き込みなど、業務は多岐にわたり、関係者も多いことから取り組みは簡単ではありません。しかしPFIとして進めれば、一連の業務を包括化して一括発注できます。国も無電柱化の推進に関する法律(2016年12月制定)に基づき、2021年に「無電柱化推進計画」(国土交通省)を策定、積極的な推進を図っています。

また、「包括的民間委託」というかたちのPPPの取り組みも増えています。これは道路や橋梁、上下水道、公園などの管理を民間委託する際、事業期間の長期化、エリアの拡大、さらには異なる種類の施設を対象にするなど、さまざまな形で包括することによって、民間事業者が取り組みやすいようにしたものです。受託する民間事業者にとって、一定の事業規模があり、また自社のノウハウを活かしながら計画的な取り組みができることは大きなメリットです。また地元企業が包括的民間委託を受注した際には地域経済にも従前以上の波及効果があり、地域活性化にもつながることから、今後取り組み例が増えていくと見られています。特に近年は、上下水道を対象とした管理・更新一体マネジメント方式(通称、ウォーターPPP)が推進されています。

インフラの包括的民間委託とは

・事業方式も事業分野も拡大が続く

PPP/PFIは国の積極的な推進策も背景に、新たな事業方式の開発や対象とする事業分野の拡大が進んでいます。

例えば、活用が活性化している事業方式の一つにコンセッション(公共施設等運営権制度)があります。これは、料金徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共団体が保有したまま、運営権を民間事業者に設定するというものです。上手に導入することで、公共団体は施設を手放すことなく民間事業者のノウハウ発現の拡大を可能にできます。民間事業者も利用者のニーズを踏まえた独自の運営の工夫を存分に発揮し事業収益を大きくすることができます。

またLABV(Local Asset Backed Vehicle)と呼ばれる新たな方式も生まれています。これは公的不動産の活用に適したもので、公共団体が公有地を現物出資し、民間事業者が資金を出資して公民の共同事業体をつくり、その事業体が公共施設と商業施設やホテル、オフィスビルといった民間の収益施設を一体的に整備しマネジメントするというものです。単体の施設整備にとどまらず、面としての開発を通して賑わいを創出できるもので、実施例も生まれはじめています。

公的不動産(PRE)の戦略的利活用によるまちづくりへの展開

こうした事業方式の開発と同時に事業分野も拡大しています。例えば、港湾周辺で空き地となったままの港湾緑地の活用(通称、みなと緑地PPP)、公募設置管理制度(通称、パークPFI)に基づく都市公園の活性化などがあります。

・都市部だけでなく地方都市でも進む取り組み

PPP/PFIは都道府県や政令指定都市、地方の中核都市など、人口規模の大きなところで取り組まれるものという印象があるかもしれません。しかし、小規模な自治体でもさまざまな取り組みが進められています。

当社が支援した事業では、例えば北海道伊達市(人口約31,000人/2024年12月時点)が、学校給食センターの新設をPFIで行いました。学校給食センターの2階で市民の健康増進と地域食材のPR、食育レストランが事業者提案として運営され、PFI事業における先進的な取り組みとして注目されています。また、静岡県袋井市(人口約88,000人/2024年12月時点)では市の総合体育館の整備運営と一体的に、付帯事業として市から土地を賃借した事業者がカフェを設置して運営しており、体育館の魅力向上が図られただけでなく、事業実施に伴う市の財政負担の縮減にも寄与しています。

PPP/PFIの成功ポイントは質の高いサウンディング

・今考えていることを示すことから始めるべき

1999年の導入以来、約25年を経過して改めて注目を集めているPPP/PFIですが、その成功の大きなポイントは、公民の最初の出会いの場となるサウンディングの機会を有効に活かすことです。

サウンディングとは、公民連携の実現に向けた、公共団体と民間事業者の意思疎通や認識ギャップの解消等を目的とした取り組みです。市場調査と呼ばれることもあります。内容や期待する成果は、対象となる公共事業の検討フェーズに応じてさまざまです。
ところが、現状ではその機会がうまく活かされていない印象を受けます。特に多いのが、公共団体側が自分たちの考えについて白紙に近い状態で「何かいいアイデアはないですか」というスタンスで取り組むケースです。

しかし対象は公共事業や公有地です。公共サービスを提供する側が何をやりたいのかがわからなければ、民間事業者は意見の出しようがありません。自分たちの商品やサービス、これまでの取り組みなどを紹介する程度のことで終わってしまいます。公共団体側としては、現在こんなことを考えている、こういうことはしたくない――いずれでも良いと思います。まだ詰められていないところがあっても当然であり、それを含めて、「この点を一緒に考えたい」と具体に示すことが重要です。

公共団体側からそうした仮説が示されれば、民間事業者側から「その事業期間は長いのではないか」とか「業務範囲をそこまで絞ったら参画できる会社が限られてしまう」「そのエリアは商業的には難しいので収益を期待するスキームにしないほうが良いのではないか」といった"赤入れ"をしてもらうことができます。それこそがサウンディングの成果です。そのプロセスを通して事業化案を確定すれば、民間企業もPPP事業を公共団体と連携して担うパートナーとして手を挙げやすくなります。

公民連携は「民間に頼る」ことではありません。サウンディングを通して、実りのあるコミュニケーションを実現することが公民連携を成功させる大きなポイントです。そのためにはまずは公共団体側として、自分たちなりの案を考え、臨むことが非常に重要です。

サウンディングとは?

パシフィックコンサルタンツの取り組み

・「多地域×多分野×多手法」により公民連携の普及を牽引

パシフィックコンサルタンツはPFIが日本に導入された1999年から積極的にPPP/PFIに関するコンサルティング業務を展開し、現在まで国内最多128件のPFIアドバイザリーの実績を持っています(「PFI年鑑2024年版」(日本PFI・PPP協会発行))。PFI法が制定される以前から各種研究を重ね、PFI事業の黎明期からさまざまな事業スキームの開発や改良を進めるとともに、内閣府のPFI推進委員会の専門委員を輩出する等、リーディングカンパニーとして公民連携分野を切り拓き、その普及をリードし続けています。その取り組みの特徴は、単に扱い件数が多いということではありません。具体的な支援範囲が「多地域・多分野・多手法」にわたっていることです。

もしPPP/PFIアドバイザリーを担うコンサルタントが、例えば大都市圏だけしか扱ったことがないとか、給食センターや公営住宅しか経験がない、特定の事業方式しか経験がないといった偏った知見に基づきコンサルティングした場合、事業特性を踏まえた最適な事業スキームを提案することはできません。当社は国のガイドラインづくりの支援などを担う一方で、国やさまざまな地域や規模の自治体に対して、多様な分野と事業方式で進めるPPP/PFIのコンサルティングサービスの提供を長年積み重ねてきました。さらには社内にあらゆるインフラに対応する技術部門を持ち、法務や財務を専門とするメンバーも擁しています。そのため「多地域×多分野×多手法」の知見に基づく最適なコンサルティングを行うことが可能です。

・モニタリングで得た教訓を次に活かす

PPP/PFIのアドバイザリー業務は、公共団体が事業内容を決定し、パートナーとなる民間事業者を募集選定して事業契約を締結すれば業務が終了します。しかし私たちは、実際にそのPPP/PFI事業が開始した後の段階において、当初の計画通り実施できているかどうかをチェックする業務(モニタリング支援業務)にも力を入れています。

公共団体のモニタリングまで継続して支援するコンサルタントは多くないかもしれません。しかし、モニタリングのサポートによって事業開始後に現場で発生しがちなさまざまな問題点を把握することができます。その教訓を次のアドバイザリー業務に活かすサイクルが、コンサルティング品質向上の源泉の1つになっています。国内最多の実績は、単なる数の多さではなく1件1件から得られた教訓の蓄積として大きな価値を持っています。

PPP/PFIは今後、グリーントランスフォーメーションやカーボンニュートラルを始めとするさらに多くの分野へと拡大し、また、ひとつの自治体ではなく広域の連携による取り組みへと進んでいきます。パシフィックコンサルタンツは最も多くの実績を有するリーディングカンパニーとしてこれからも公民連携事業をサポートし続けていきます。

石川 崇之

ISHIKAWA Takayuki

社会イノベーション事業本部
PPPマネジメント部 部長

2018年入社。病院や複合施設、都市公園、道の駅、健康増進施設、観光交流施設、宿舎、卸売市場、下水処理施設等の幅広いPPP/PFI事業の調査研究や可能性調査、アドバイザリー業務、モニタリング業務に従事。内閣府専門家派遣等の講師を務めるなどPPP/PFIの普及活動も行っている。PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)、技術士(経営工学部門)、RCCM(都市及び地方計画)。

山口 剛

YAMAGUCHI Tsuyoshi

社会イノベーション事業本部
PPPマネジメント部 インフラPPP室 室長

1999年入社。複数の部門で経験を重ね、事業評価、都市計画、自治体経営支援等の多様な業務に従事。現在は、上下水道、道路、バスターミナル等のインフラを中心としたPPP/PFI事業の可能性調査、アドバイザリー業務に取組む。土木学会小委員会に参加しPPP/PFIの普及活動も行う。技術士(建設部門)。

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