2024年10月1日、パシフィックコンサルタンツのホームページが全面リニューアルされました。ページを開くと、一人の女性が海を見つめて立つシーンが目を引きます。今回、全面リニューアルにあたりパシフィックコンサルタンツの想いを伝える方法として、ブランディングムービーを制作することにしました。それは広大な海を前に、そして大都会の夜の高層ビルの屋上で、一人の女性がコンテンポラリーダンスを踊るもの。70余年を歩んできた私たちが未来に何を届けようとするのか、その想いを伝えるものです。この独創的なブランディングムービーがどのようにして生まれたのか、経営企画部広報室と制作チームに話を聞きました。
INDEX
枠にとらわれない新しいチャレンジ
――そもそもブランディングムービーの企画はどのようにスタートしたのですか?
きっかけは2015年以来となるホームページのリニューアルです。
70年余りの事業活動を通して、社会インフラ整備に関わる人にはパシフィックコンサルタンツという会社をよく知っていただいています。しかし、その世界から一歩外に出たら、私たちを知る人はほとんどいません。
今、世界が戦争や貧困、格差に脅かされ、地球環境の持続可能性すら危ういという深刻な課題を背負うなか、私たちは従来の建設コンサルタントとしての個々のインフラ整備の枠を越えて、社会インフラサービス企業として、社会課題の解決を目指し、希望に満ちた未来を創造していこうとしています。これを実現するためには、もっと多くの人に、一緒に課題解決に挑む存在として当社を知っていただかなければなりません。
そのためにホームページをもっとたくさんの人に見ていただき、当社への理解を深めていただきたい、というのがリニューアルに当たっての私たちの思いでした。
――INSIGHTやSTYLEなどのコンテンツもそこから生まれたということでしょうか。
そうです。防災・レジリエンスやグリーントランスフォーメーションといった、社会的に関心度の高い話題に対して、当社の知見や取り組みを積極的に発信し、そもそも当社は何を目指して事業に取り組んでいるのか、という企業の姿勢を発信しています。
今回は私たちパシフィックコンサルタンツを知らない人にも、当社が何をやってきて、どんな未来を創ろうとしているのか、伝えたいと思い、ブランディングムービーを企画し、ホームページのトップに置きました。
――それにしてもパシフィックコンサルタンツとコンテンポラリーダンス、なかなか結びつきません。
そうですよね。ブランディングムービーというと、従業員がいきいきと仕事をしている姿をドキュメンタリー風にまとめたり、社会インフラに関わる企業としては手がけた橋やトンネルなどの実績を見せたり、自社が構想する未来のまちの姿をイラストやCGで示したり、というのが一般的だと思います。
コンテンポラリーダンスを提案してくださったのは長年にわたって当社のさまざまな実績・プロジェクトを撮影していただいているフォトグラファーの吉田真さんです。実は広報室のメンバーも意表を突かれたというか、まったく予想していないものだったので、最初は「コンテンポラリーダンス? 何それ? どうつながるの?」という印象でした。
「社会の声を聴き、まだ見ぬ未来を創造する」というのがメインコンセプトで、「社会インフラに関わる企業として戦後社会の再生に大きく寄与してきたパシフィックコンサルタンツが70年の知恵をもって、次に『何が必要か?』を問い続ける」ことをコンテンポラリーダンスで表現するというものです。"海を見つめて立つ女性の姿があり、そこに波の音や風の音、さらに新幹線や飛行機、街の雑踏の音が重なる。それはまさにパシフィックコンサルタンツがつくりあげてきたものを象徴する音。目を閉じてその音を聞いていた女性が、やがて目を見開いて踊り出す。つまり歴史を受け止め、飲み込んで、身体で未来を表現し始める"というストーリーです。
ブランディングムービーだから届けられる想い
――コンテンポラリーダンスだからこそ表現できるものがあるということですか。
私たちも提案を受けて気付いたのですが、今の混沌とした時代に、『未来をプロデュースする』ことをビジョンとして掲げている私たちの姿は、過去のインフラ構造物を実績として並べたり、自動車が空を飛んでいたりするような未来のまちの想像図では示すことができないと思いました。私たちが取り組んできたのは、単なる社会インフラづくりではありません。確かに、結果としてかたちになったものは橋や鉄道やビル、ダムや堰堤でも、私たちの目的はそれらをつくることではなく、それらを通して豊かな社会や平和な暮らしを実現することです。
もし私たちの歩みを "もの"で語り、その延長で創造できる未来を描いても、わくわくするような姿にはならないと思います。私たちはこれまでの70余年の中でも挑戦を続け、進化しています。時代とともに変化する社会課題の解決には、私たち自身も、前例にとらわれない、新しい自由な発想が求められます。具体的なものから離れるからこそ人の想像力は解放されて、大きな世界へと飛翔できる。新たにステートメントを掲げて歩き出した今の私たちには、それが必要だと考えました。
パシフィックコンサルタンツがこれまで実績として積み上げてきたもの、これからも積み上げるもの、と"もの"のレベルで共感を得ても、それを一緒にやりましょうという話にしかなりません。「社会の声を聴き、まだ見ぬ未来を創造する」ことにはつながりません。見る人の心にどうしたら私たちの想いが届くのか。コンテンポラリーダンスは情念の表現です。当社が考える未来を表現するのにふさわしいと思いました。
――制作にあたって苦労したのはどんなところですか?
すべてです(笑)。
シナリオの前半は海を舞台にした静の世界、後半は渋谷の大都会の高層ビルの屋上を舞台にした動の世界ですが、具体的に場所をどこにするのか、多くの候補地から絞り込んでいきました。パシフィックだから、海は太平洋でと考えて千葉の九十九里浜で候補地を探しました。
撮影当日は台風が近づいていたこともあってドラマチックな空が広がり、波も高めで良い舞台になりました。70年の歴史の語り役となる音響は、羽田空港や都心の天空庭園、新幹線ホーム、さらに動の舞台となった渋谷でも、渋谷のヒカリエのデッキやバスターミナル、スクランブル交差点、東急東横線ホームなど、その場所ならではの音を集めました。
――ダンサーや曲はどのように選んだのですか?
ダンサーはオーディションをさせてもらいました。最終候補のダンサーには、パシフィックコンサルタンツ創立の背景、これまでどんな仕事をしてきたのか、これから果たすべき役割をどう考えているのかといったことをお伝えし、最終的に鈴木夢生さんにお願いしました。
鈴木さんなりに当社の仕事を受け止めてくれ、今回のダンスで「自分が生きていくという喜びを表現したい」というメッセージをもらいました。曲は作曲家の方に書き下ろしてもらったものです。ダンサー同様、当社の歩みや未来への想いを、時間をかけてお伝えしたうえで作曲してもらいました。
見た人一人ひとりが未来を考えるきっかけになれば
――このブランディングムービーを見た人にどんなことを期待していますか。
いろいろな人が見て、さまざまな感想があると思います。それでいいし、それが必要なのだと考えています。
すでに当社を良く知っている人は、当社の変化やチャレンジを感じてくださると思いますし、まったく知らない人が見たら、何をやっている会社だろうと興味を持ってくださるのではないでしょうか。就活中の学生のみなさんは、なんか面白いことをやっている会社だな、自分も何かやれるかもしれないな、と感じてくれると思います。
鈴木夢生さんは、パシフィックコンサルタンツの70年とこれから目指す未来を、自分なりに受け止めて今回のような身体表現で力一杯現してくれました。当社が未来に向けて何をしようとしているのか、少しでも感じ取ってもらえるものがあればうれしいです。さらには、その未来に自分たちはどう関わっていくのか、一人ひとりが考えるきっかけになれば社会インフラサービス企業としての想いは伝わったのではないかと思います。
このブランディングムービーにテキストは一文字も入りません。映像から感じ取れるメッセージを、それぞれがそれぞれのかたちで受け止めていただくことを期待しています。
ダンサー紹介
鈴木夢生(すずきゆう)
千葉県出身。ダンサー。
幼少期よりバレエを学ぶ。カナダのArts Umbrellaへのダンス留学を経て、カナダのバレエ団、新潟市のNoism2に2019年まで所属。現在は東京を拠点にフリーランスダンサーとして活動。東京2020オリンピック開会式出演他、国内外様々な振付家の作品にメインダンサーとして出演している。
MESSAGE
「社会の声を聴き、未来を創造する」
このビジョンをダンスでどのように表現できるのかを考えたとき、未来のまちを創造することは、私たち自身の未来を創造することと重なるのではと思いました。
日常において私たちの周りに当たり前に存在する自然やまち。 そこにはまちづくりに関わった人々の想像力と想いが詰め込まれていると思います。 一見当たり前に存在するものに込められた背景的な部分を再認識することを振付のコンセプトとし、 創造される未来のまちへの期待と、そこに自分が存在する喜びという感情を表現させていただきました。